第2回は、兵庫県三木市のニシガキ工業株式会社 営業部 スーパーバイザー 中塚 治実 様にお話しをうかがいました。
ニシガキ工業株式会社は、日本三大刃物産地のひとつである兵庫県三木市に本社・工場を構え、伝統的刃物技術を受け継ぎ、その中でも特に鋏(はさみ)を得意とするメーカーです。果樹園等の剪定・収穫用ツールや、造園業を対象にした商品を製造しています。
企業ウェブサイト: https://www.ni-co.jp/
◆ビジネス展開においてEUを選択した理由
当社の事業範囲は、園芸でも特にプロフェッショナル向けのツールです。且つての日本製品は、ローコストを武器に世界中で販売されていた時期がありました。近年は逆にローコストの中国製品が大量に出回り、日本製品は高価格帯のプレミアム商品でなければ活路が見いだせない現状があります。
このような市場状況の中で輸出先を検討した時に、プレミアム価格帯の商品を所得的にも許容し、その価値を認めてくれる市場として、EUはトッププライオリティです。
また、EUで認められた商品であれば、他のどの地域であってもEUの「〇〇国で人気です」というセールストークができ、製品に箔が付きます。ブランディングの面からも価値や評価が高まるので、EUを選択することは当然でした。
EUのマーケットは品物の持つ価値を正しく評価し、それに見合った対価を払ってくれるというのは、業界内での共通の認識だと思います。
お話しを伺った中塚さま
◆EENを利用したきっかけ
2019年から海外展開を始めたのですが、どのようにすればいいのか全くわからなかったので、チャンスを拡げるための手がかりになればとの考えで、ジェトロや中小機構に相談しました。
そこで、ジェトロの担当者からEENについて紹介されました。当初は「ウェブベース・日欧の協力関係」程度の認識でしたが、まずはEUとの接点を増やしたいとの思いで、EEN協業リクエストデータベースにプロフィールの掲載登録をしました。プロフィール作成時に、EENジャパンの担当者から記載内容や英語での表現方法等アドバイスを受け、EU企業から見て理解しやすい内容になり、後日の成果につながったと考えています。
◆ハンガリー企業とのパートナーシップの経緯
2019年10月にデータベースにプロフィールが掲載されてから、1~2件の問合せ(引き合い)がありましたが、なかなか具体化には至りませんでしたが、掲載から1年以上が経過した2021年4月にハンガリー企業からの問合せを受けました。
同社は約30年前に創業し、ハンガリー東部で農薬・肥料・種子の販売で事業を伸ばしている有力企業です。問合せを受けたときは、すでに同社が持っている販売チャネルを活かして事業を拡張すると言う多角化を目的に、園芸道具やそのほかの農業資材を商品ラインに追加しホームセンターのようにしたいと考えているようでした。
事業多角化を進めるにあたって日本製の商品を扱うということは、大きな選択肢になると思います。やはり日本製品は高品質ですし、ビジネス相手としても日本人はまじめに取り組むというイメージを強く持たれていると想像します。日本や日本製品に良いイメージを持っていたところで、欧州企業が具体的にどのような候補企業があるのかを探すときに、EENが大きなゲートウェイになっていると思われます。
同企業は2022年に当社ブランド導入後、園芸道具の販売は好調に推移し、2023年7月にリピート発注を受けました。さらに11月には翌24年分のリピート発注に至り、持続的なビジネスとして回りだしています。
◆パートナーシップの流れ
2019年10月 EEN協業リクエストデータベースにニシガキ工業のプロフィール掲載
2021年4月 ハンガリー企業から問合せ(引き合い)を受ける
2021年7月 初受注
2021年8月 ハンガリー企業創業者および事業部長とオンラインミーティング
2022年2月 現地へ商品初着荷
2022年春~ ハンガリーにおいてニシガキ工業製品販売開始
2022年8月 ハンガリー国内の展示会に2社で共同出展
2023年2月 ハンガリー企業年次総会にてNISHIGAKIブランドと製品の紹介(同総会には約100社の販売店が参加)
2023年10月 首都ブタペストの展示会に共同出展
◆パートナーシップまでを振り返って~日欧産業協力センター、EENジャパンの役割
ハンガリー企業とコンタクトできたこと自体が、非常に意味が大きく、それができたのは、EENの欧州におけるメジャーなゲートウェイとしての存在感があったことが大きいと思います。農薬や肥料で伸びてきたハンガリー企業がツールビジネスという異業種に参入しようとしたときに、ジャパンブランドが有力な選択肢の一つとなるケースは多いと思います。そんなときにゲートウェイとしてのEENの存在があり、協業パートナーに求める条件や役割について、プロフィールから読み取れる協業リクエストデータベースの存在が役立ったと思います。
当社とハンガリー企業との協業は、現在までのところ順調に推移していますが、おそらく最初のハードルはスムーズなコミュニケーションが取れるかどうかにあり、それを乗り越えた結果、パートナーとして協業をスタートさせるという意思決定ができると考えます。
そのプロセスの中で、EENの存在は大きいと推測します。EENが側面支援してくれることで、安心感が得られるのではないでしょうか。また、先ほどもお話ししましたが、プロフィール作成時に記載する内容をブラッシュアップしていただけたことも、スムーズなコミュニケーションにつながっていると思います。
◆EEN協業リクエストデータベースを用いたウェブベースのマッチング
昨今は、いろいろなビジュアルや動画を使ったマーケティングが主流になり、効果的だという考えが多いと思います。私も効果的だと思いましたし、コミュニケーションとして伝わり易いという考え方もあるのですが、それとは少し異なる見方も持っています。B to Bの関係では冷静な判断を求められることがあり、その場合にはビジュアルよりも、EENのデータベースに掲載されているプロフィールのように、まとまって書かれた文章の方が適しているのではないかと思います。
日本の伝統刃物技術が受け継がれた製品がEUでも認知され始めています
◆今後の課題や挑戦、将来的な展望について
当然ですが、当社としては世界市場への販売を増やし貿易比率を高めようと目論んでいます。これまでは未知の世界であった東欧諸国についても、今回のハンガリー企業との協業経験から、それなりの市場ポテンシャルがあることが分かりましたので、更に市場拡大を図りたいと考えています。
具体的には、2024年にドイツ、イタリアでの展示会への出展も視野に入れ、販路展開を加速したいと考えています。
◆これからEUに展開しようとしている日本の中小企業へのアドバイス
最初は何も経験がなくて、やみくもの状態でしたが、ためらうことなく日欧産業協力センター、EENジャパンに連絡してみたことが結果的によかったと思います。
白紙の状態からのスタートであれば、「まずは手を出せる選択肢であればトライしてみる。」というのが最初の戦略かと考えます。EENは選択肢の中でもアプローチしやすく、サポートを受けながらプロフィールを登録出来て、効果が期待できる有力な手段と考えます。
(2023年12月)
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