第1回は、静岡県富士宮市に本社を構える 株式会社マクルウ 取締役 安倍 信貴 様にお話しをうかがいました。
株式会社マクルウは、マグネシウム合金パイプおよびワイヤー・ロッドの冷間引抜加工、パイプ曲げ・溶接など各種二次加工、マグネシウム合金を採用した製品の企画・制作を得意とされている注目企業です。
企業ウェブサイト: http://macrw.com/
◆市場展開においてEUを選択した理由
当社の特長はマグネシウム合金の加工に特化した事業です。そのマグネシウム合金の中でもパイプの材料、板を曲げたり溶接したりしてモノ作りする市場は従来には無かったものです。そのようなところからスタートし、優先的に福祉・介護機器、デザイン性の高いインテリア、付加価値の高い音響機器の市場を狙っていこうとなりました。
もちろん日本国内から事業をスタートしましたが、前述の分野での先進的市場はすべてEUであることを認識しました。さらには、市場としての成熟度の魅力があるのもEUです。
また、マグネシウムを一番使う自動車メーカーはEUにあるので、新素材への付加価値を認める市場環境が強いと思われました。
アジアも視野に入れた今後の市場展開を考えたときに、EU市場から始めることでレバレッジ効果も期待できる、と考えEU市場を選択しました。
◆スウェーデン企業とのパートナーシップの経緯
そもそものきっかけは、日欧産業協力センター・EENジャパンのウェブサイトで紹介されていたオンライン商談会イベント「B2WORTH 2020」(2020年6月開催)に参加したことです。
コロナ禍であっても「無料で商談会に参加できる」と前向きに捉えてビジネス展開を進めた結果のパートナーシップでした。
B2WORTHのイベントではEU企業5社と商談をし、うち2社とは会期後にもメールでの連絡を取り合っていました。その2社のうちのスウェーデン企業は、積極的に造りたいものがあるとのことでデザイン図を送ってきてくれて、それをこちらで試作したことから話が進みました。
特に苦労はなかったですが、デザインや図面作成には費用がかかることがあります。実際にモノができるまでの初期費用がかかってしまうのではないかとの不安があったのですが、(パートナーシップの)話を進める初期段階で、スウェーデン側はデザインを自主的にやります、当社では試作を自主的にやりますという、確認が取れて、お互いにリスクのない役割分担を最初に決めることができました。これによって、大きな不安もなく話を進めることができました。
その一方で国際郵便のEMSが2ヶ月かかるなど、コロナ禍での物流の困難さをつくづくと感じました。ネットをつうじたディスカッションはやりやすい反面、モノがからむとなかなか大変なことがありました。
◆パートナーシップ成立までの日欧産業協力センターの役割
きっかけになったオンライン展示会の情報をもらえたこと、この機会に巡り合わなければこの結果はありませんでした。
EENジャパン担当者には、折に触れてフォローしてもらうことができました。実際に受注が決まってからモノを作るのではなく、一緒に作りたいという気持ちだけで動いているような仕事というのは、スケジュールがずれてしまいがちなのですが、一定のスケジュールを意識しながら進められたのは、EENのフォローがあったからだと思います。
私たちからは直接見えないことなのですが、EENジャパン同様にEENスウェーデンからのフォローもあり、日欧双方EENからのフォローを実感しました。スウェーデン(企業)側にも後ろから背中を支えられているような安心感があり、話を進めていく際のバックボーンになったのではないかと推察しています。
◆今後の課題や挑戦
目下、2月初旬のストックホルムで開催される展示会に向けて、スケジュール内で、なるべく良い試作展示品を作る作業を進めています。材料、素材がマグネシウムでシンプルなスカンジナビアンデザインとの組み合わせに加え、環境負荷の非常に少ない表面処理を取り入れる、あるいは2-3年後になりますが、将来的にはスクラップ材を環境負荷の少ない方法でリサイクルされたマグネシウム合金を使うなど、EU市場だからこそ価値を高く認めてもらえるものを早くEUの皆さんに知っていただきたいと思っています。その一番良い方法として、今回のスウェーデン企業と進めているモノづくりが、この推進役になってくれることを期待しています。
このパートナーシップは、今後も様々な製品開発や展示会への出展が期待されますが、マーケティング的な観点から、スウェーデン企業と一緒に作った商品を発表する場であることに加え、様々な技術を最初に発表する場としての方向付けの可能性もあると思っています。
◆現在の状況、将来の展望について
先ほども触れた、スクラップ材を低環境負荷でリサイクル技術をこの1年から2年で進めていきたいです。そのための設備投資や、新しい工場の契約を進めています。
CO2排出量削減の流れの中で、マグネシウムでモノをつくって、そのモノが果たす役割をより明確に打ち出した事業を進めていきたいと思っています。今後は、冒頭に挙げた3つの市場、福祉・介護、デザイン性の高いインテリア、音響機器以外のところで、もう少し市場規模の大きいところが対象になってくると思います。その中にはドローンや、自動車に代わる新しいモビリティといった、新市場への取組みも含まれてきます。経済安全保障の観点から輸出が難しい分野であるので、輸出が簡単ではない市場となる可能性もあることから、あらためてEU市場とのかかわり方も考えていく時が来るのではないかと思っています。
今はB2Cが主流ですが、B2Bビジネスをどう広げるかが課題でもあり、可能性を検討していきたいです。
(聞き手: 日欧産業協力センター EEN コーディネーター ラインティース・マーク)
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