ヴルカヌス・イン・ヨーロッパプログラム
 日本人学生対象
   

 

 
塩見 涼太
ヴルカヌス・イン・ヨーロッパ2019年度派遣
 
語学研修:英語(ダブリン, アイルランド)
企業研修:PEC社(ベルギー)
 
 
〇 はじめに
    私は、大学ではロボティクスを専攻し、英語の勉強や短期留学に励みながら、海外で働くことにも興味を持っていました。
 大学4年のとき、海外大学院進学に向けて準備をしていました。出願時期の11月頃が迫る中、出願に必要なTOEFLのスコアが伸び悩んだり、書類の準備も間に合っておらず、不安な状況でした。その状況の中、ヴルカヌスプログラムが最後の望みという気持ちで応募しました。最終的には無事に合格をいただくことができ、そのときはヴルカヌスに救われた気持ちでした。
 私は、ヴルカヌス2019にて、4ヶ月間アイルランドで英語の語学研修、8ヶ月間ベルギーのバッテリー企業PEC社で企業研修を行いました。ヴルカヌスの留学は、海外大学院の出願準備期間にもなり、また海外で働く夢も叶えられ、とても充実した1年となりました。
 
〇 アイルランド・ダブリンでの語学研修
 4月から、ダブリンにある語学学校で4ヶ月間、英語を勉強しました。クラスの8割ほどがブラジル人で、日本人は学校内に数人いる程度でした。語学学校の授業は、ディスカッションなど、スピーキングに力を入れていました。4ヶ月の語学研修を通して、英語を使って何事も乗り越えていける自信をつけることができました。
 アイルランドは自然が豊かで、週末に丘を登りにトレッキングに出かけたり、日本の都会ではなかなか味わえないリフレッシュした時間を過ごせました。ホームステイ先の家族には5歳の双子がおり、アイルランドの日常生活を垣間見ることができました。予想通り、じゃがいも料理を出されることが多かったですが、調理の仕方も豊富で、意外にも飽きることはなかったです。
 
ダブリン中心部からバスで1時間ほどで海と自然が眺められる
 
 
〇 PEC社(ベルギー)での企業研修
  8月以降、サービスエンジニアとしてベルギーの PEC 社で8ヶ月働いていました。PEC は主にバッテリーの測定機器や充放電機器を企業向けに販売している会社です。会社では中国人、インド人、ハンガリー人など、外国籍の人が多く働いているため、社内公用語は英語でした。私の仕事では、顧客先が抱えている問題を解決したり、顧客への新たな製品の導入を主に行っていました。他にも、製品が測定機器であるという特性上、較正作業も重要な仕事の一つでした。
 サービスエンジニアは、顧客へ向けたサービスが仕事の一つであるため、顧客先へ出向く必要があります。私が担当していた顧客はドイツと日本の企業です。そのため、8ヶ月のうち、3ヶ月はドイツへ出張していました。日本の顧客企業からは製品に関する質問がメールで送られてきたため、その対応も逐一行っていました。
 サービスエンジニアの部署では、ベルギー人3人、インド人1人が私とほぼ同じ時期から仕事を一緒にスタートしました。仕事をしているうえで、大変な時期もありましたが、同期の社員と助け合いながら乗り越えていけました。同期という存在は大切なもので、大変感謝しています。
 今回の企業研修では、学生ではできない経験を多く積むことができました。例えば、長期のホテル生活、ベルギーとドイツで働く経験は、なかなか学生時代において経験できないものです。会社員生活を通して、将来の働き方についても深く考えるようになりました。
 
〇 ベルギー・Leuven での生活
 企業研修中はベルギーの Leuven という都市に住んでいました。 Leuven には、KU Leuvenというベルギーの中でもトップの大学があることにより、留学生が多く集まります。町中やスーパーではオランダ語が溢れていますが、この町に住むほぼすべてのベルギー人が英語を話せます。警察官も問題なく英語を話してくれました。オランダ語がわからない私にとっては、とても住みやすい場所でした。唯一の欠点は家探しが困難なこと、家賃が高いということです。私はシェアハウスに住んでいましたが、少しストレスがたまることも多かったです。ただ、8ヶ月のうち3ヶ月はホテルで生活をしていたため、大きな問題になることはありませんでした。家賃も抑えられ、会社からも近く、今ではいい物件だったと思っています。
 
クリスマスのLeuven中心部
 

 

〇 ドイツの南西部での生活
 Schwabenという地域(ドイツ南西部)に位置する、とある田舎町でも3カ月間ホテルで生活していました。この地はロマンチック街道とよばれるエリアのひとつであり、おもちゃのような、かわいい建築物が立ち並んでいます。ここでは、日本人を見かけることはありませんでしたが、中国人観光客は団体でたくさん来ていました。
 ドイツ人のエンジニアの方は皆英語が話せたため、ドイツでも仕事はすべて英語で行っていました。ただ、東欧からの移民労働者の方たちは、英語を話せない場合も多く、意思疎通で苦労しました。ジェスチャーを駆使し、基本的な英語で話すことで、なんとかコミュニケーションを取ることができました。  
 週末は、Munich、Stuttgart、Nurembergなどドイツ主要都市に電車で観光にいきました。私が滞在していた場所は田舎町のため、電車が2時間に1本しかない場合もあり、電車に乗り遅れそうでひやひやする場面が何度かありました。ベルギーと比べると、ドイツの物価は安かったです。また、ペットボトルを回収するため、Pfand というデポジットを取るシステムがあったり、ドイツでは環境対策がより推進されていました。
 
〇 ヴルカヌスの経験がどう活きたか
 ヴルカヌスの経験は、海外大学院出願時にも、大いに役立ちました。ヨーロッパでの就労経験、語学研修で伸ばした英語力、出願への準備に十分な時間を費やせたことによって、大学院の合格をいただくことができました。
  ヴルカヌス後は、フランス・スペインの大学院を卒業し、現在はアイルランドのIT企業で働いています。アイルランドは、初めて留学した2019年と執筆現在の2024年を比べると、ビルや住宅の建築は多少進んでいるものの、自然豊かな風景は変わっていません。振り返ってみると、ヴルカヌスの語学研修時には、ダブリンの家賃の高さや家探しの大変さには気づきませんでした。
 ダブリンでは、多くの企業が集中しており、住みたい人に対して住宅の数が足りていません。そのため、家賃が高く、家探しも難しくなっている状況です。一方、ヴルカヌスの語学学校期間中は住む家が事前に準備され、ホームステイ代(家賃)も負担してもらえるため、家探しや高い家賃について考える必要がありませんでした。そのため、留学生活を楽にスタートできた反面、ダブリンの住宅問題には気づけなかったと感じます。語学学校期間中は、住宅問題に悩まされずに留学が円滑にスタートできるよう、しっかりとサポートされていたともいえます。
 ヴルカヌスの経験は、グローバルに活躍していく第一歩になりました。また、社会人としての生活を送る中で、今後の人生で役立っていくであろうビジネススキルや、海外で生きていく力を養うことができ、今でも大変感謝しております。海外、特にヨーロッパに興味のある方にはお勧めしたいプログラムです。
 
(2024年 執筆)
 
 
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