日本をリードするグローバル人材に期待する - ヴルカヌスインヨーロッパ同窓会に参加して

ヴルカヌスインヨーロッパ同窓会1

2024年9月

田辺靖雄(日欧産業協力センター専務理事)

9月6日東京・南麻布のEU代表部においてヴルカヌスインヨーロッパ同窓会が開かれた。約160人の卒業生が参加し、代表者によるパネルディスカッションの後、活発なネットワーキングが展開された。

ヴルカヌスインヨーロッパは、ヴルカヌスインジャパンと並ぶ日欧産業協力センター(EUJC)の看板事業であり、1996年以来532人の日本人学生をEU各国企業にインターンとして派遣している。「ヴルカヌス」はローマ神話の鍛冶の神であり、その名の通り、鉄は熱いうちに打て、とばかりに、日本の大学生・大学院生のヨーロッパ/グローバル志向の能力開発に貢献している。

同窓会の冒頭、来賓の駐日欧州連合ジャン・エリック・パケ特命全権大使からご挨拶があり、「ヨーロッパから日本に来て日本は複雑だと思うが、たぶんヨーロッパも日本からみて複雑でしょう。皆さんはその複雑なヨーロッパを体験しているので日欧関係の強化に大いに期待したい」と会場を笑わせながら述べられた。

また日本側来賓の経済産業省 八山幸司通商交渉官は、「日本が近代化を進めた明治維新の頃、多くの日本の若者が欧州を訪問し見聞を深めて、帰国後にその経験を生かして現在日本の礎を築き、日本と欧州の友好関係に貢献したように、この事業はこれからの日欧間の連携にとって重要な役割を担っていくものと確信しています」と期待を表明された。

パネルディスカッションは、A氏(1997年度スペイン自動車部品メーカー派遣、現在日本大手計測機器メーカー勤務)、B氏(1999年度ベルギー建築事務所派遣、現在日本大手自動車メーカー勤務)、Cさん(2006年度フランス自動車メーカー派遣、現在日本大手電機メーカー勤務)、D氏(2006年度ベルギーIT企業派遣、現在国際大手コンサルティング企業勤務)、Eさん(2007年度フランス素材メーカー派遣、現在日本政府関係機関勤務)、F氏(2017年度リトアニア レーザー企業派遣、現在日本大手化粧品メーカー勤務)によってなされた。

A氏は現在計測方法のISOの活動に従事されており、ISO/標準というヨーロッパを中心とする分野で日本から参加できているのはヴルカヌスの経験のおかげだと語った。

B氏は、ヴルカヌスの経験のおかげで自身の目が開かれ、大手官庁に就職し、国際機関勤務も経験して、現在は大手自動車メーカーで新事業の立ち上げに携わっていると言う。

Cさんは、フランス企業での勤務経験でもまれたおかげで「謎の自信」がつき、日本の大手電機メーカーでは突破口人材として登用されて長期戦略策定に従事しているとのことである。

D氏は、ベルギーという複数文化の国を経験したことで、新しいジャンルは複数文化の波打ち際で起こることがわかり、日本発の価値観のグローバルな展開に貢献したいと意欲を語った。

Eさんは、フランス企業の研究所で勤務したおかげで国際的な研究活動になじみができ、現在日本の政府機関で国際関係や人材分野での業務に役立っていると語った。

F氏は、大学院在学中にアカデミアか企業か進路を迷っていた時期にヴルカヌスプログラムに参加し、リトアニア企業の研究開発において、先方から求められる方法ではない方法の提案が評価された経験から、理工系人材としても通常のレールから外れた道を歩むことの有用性を認識したとのことである。

パネルディスカッションの登壇者のみならず、ネットワーキングの機会に数々のヴルカヌスインヨーロッパ卒業生と会話をして大変勇気づけられた。私の印象・所感を以下に述べたい。

第1に、ヴルカヌスインヨーロッパ卒業生は皆、グローバル志向であり、タフであり、イノベーティブである。これは皆ヴルカヌスの経験から多くを学び鍛えられているからであろう。彼ら彼女らは既にそれぞれの企業、所属先で活躍され中枢機能を担っている人材もいれば、今後大いにそのような発展が期待されると感じさせるものがある。非常に心強い。

第2に、継続は力なりである。1996年からスタートし、この事業の卒業生は500名を超える。事務局としてこれまでこの事業を運営してきた努力に感慨を禁じ得ない。これまでこの事業を支えていただいたスポンサーである経産省、ヨーロッパの受入企業、派遣にご協力いただいた関係大学関係者に深く感謝申し上げたい。正直に申し上げれば、昨今のユーロ高・円安のために派遣数を減らさざるを得ない状況になっていることを改善したい。

第3に、この卒業生集団は日本にとって貴重な財産である。彼ら彼女らは必ずや日本の対ヨーロッパ関係やグローバルな関係のために活躍するであろう。今回の同窓会をきっかけに、世代を超えた卒業生のネットワークが強化され、彼ら彼女らの自発的な活動の盛り上がりに期待したい。また、日欧産業協力センターとしても、いわば財産の管理人として適切なメンテナンスを心がけたい。関係者のご協力、ご支援を切にお願いしたい。

以上
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