産業施設のエネルギーコストと二酸化炭素排出量を削減するために設立されたフランスの新興企業であるMETRON-EVA Factoryは2019年、日本の主要通信事業者であるNTTグループのNTTドコモベンチャーズの出資を受けました。NTTドコモベンチャーズの出資を受けたことにより、METRONはNTTファシリティーズと提携、人工知能やビックデータを使用した日本における産業のエネルギー効率改善に向けて協力連携することを目指しています。
クリーンテクノロジーの専門家であるMETRON-EVA Factoryは、産業施設のエネルギーコストと二酸化炭素排出量の削減を支援するために2013年にパリで設立されました。このフランスの新興企業は、人工知能、ビッグデータ、機械学習に基づくテクノロジーとデジタル化された人間の専門知識を組み合わせた解決策を想定し、開発しました。
METRONのプラットフォームは、データの収集と工場資産のデジタル化を通じて、異常なエネルギー動作を検出し、消費に影響を与える要因を特定し、すべてのセクターの産業がエネルギー消費を削減するのに役立つリアルタイムのエネルギー効率化アクションを推奨します。 METRONのソリューションは、自動車、鉄鋼製造、化学、ガラス、食品などの業界に導入されています。
METRONは現在、世界中の130を超える企業と提携しており、2020年にはサンフランシスコを拠点とするClean Tech 100に選出されるなど、エネルギー部門の主要なグローバルリーダーから世界的な潮流を変える企業として認識されています。2020年3月には日本オフィスを開設しています。
NTTグループは日本の主要な電気通信グループです。携帯電話事業者のNTTドコモ、地域事業者のNTT東日本とNTT西日本(1985年に民営化された旧日本電信電話公社から継承)、NTTファイナンス、NTTアーバンソリューションズ、NTTエレクトロニクスなどの専門企業が含まれます。NTTグループは30万人以上の社員が世界中にいます。
NTTドコモベンチャーズは、NTTグループのスタートアップおよびベンチャーコミュニティへの架け橋です。サービス、テクノロジー、プロセスの革新に焦点を当て、情報通信技術を使用して医療、教育、農業、環境などの業界に更なる価値を与えることを目的として、国内外の新興企業に投資しています。
NTTファシリティーズは、1992年にNTTの旧建築・エンジニアリング部門から新設された、エンジニアリング・コンサルティング会社です。グリーンITビル、太陽光発電システムソリューション、事業継続ソリューション、データセンターの建設と運用、ビル管理などの分野でサービスを提供しています。 NTTファシリティーズは、日本の他に、香港、インドネシア、ヨーロッパにオフィスを構えています。
エネルギー効率の向上は、ヨーロッパと日本の気候政策の重要な要素です。日EUの両方が2030年までに最低30%のエネルギー効率の向上を目指しています。これには全事業分野での取り組みが必要であり、エネルギー効率サービス事業者にとっての新たなチャンスとなります。
METRONが欧州および他地域で事業展開をしていた時期、NTTファシリティーズは高度なエネルギー管理ソリューションで事業の多様化を目指していましたが、国内でのパートナー探しは難航しました。NTTファシリティーズのヨーロッパオフィスの責任者である小野健太郎氏は「多くの国で多くのイベントを支援した暁に、ようやく2017年のアムステルダムでのヨーロッパユーティリティウィークでMETRONを見つけることができました」と話しています。
従来は、エネルギー効率を改善するためには、マシンを変更するのが基本的な手法でしたが、デジタル化によりソフトウェアベースの解決策が可能になります。 METRONは、機械の使用状況及び最適化の方法を理解するため、工場のデジタルツイン(実際に製造される製品や部品をバーチャル環境でテストするためのデジタル複製)をコンピューター上で作成しています。NTTファシリティーズは、この新手法に魅了されました。
2年間の議論の末、NTTドコモベンチャーズは2019年にMETRONに投資し、フランスのスタートアップのソリューションを日本市場に導入するとともに、工業用地のエネルギー効率最適化サービスを通じてNTTファシリティーズのビル管理ビジネスを強化することを目指しています。
「日本では、地方分権化と流通が課題であり、おそらく他のどの国よりも重要です。 METRONは、AIプラットフォームを使用して、エネルギーのサプライチェーン全体を最適化する用意があります」とMETRONのCEOであるVincentSciandraは述べています。
このパートナーシップは、双方が経験と補完的なノウハウを共有できる良い機会です。フランスや他国の模倣ではなく、日本市場と日本の商習慣に適応するソリューションを見つける事が課題でしたが、この2国間の例は、主要な日本企業と革新的な欧州新興企業が、気候変動対策とエネルギー転換において有意義な貢献をもたらすことができる例となりました。
METRONとNTTファシリティーズは現在、国内産業にエネルギー管理改善の取り組み支援の事業を展開しています。フランスの新興企業と日本企業は、産業界の二酸化炭素排出量削減に向けた取り組みを支援し、2050年までのカーボンニュートラルの新しい国家目標とパリ協定の世界的目標の達成に貢献します。