鉄鋼業界の脱炭素化は、2050年までにカーボンニュートラルを達成するための鍵となるでしょう。世界の化石燃料のCO2排出量のうち、鉄鋼が7〜9%を占めています。水素は、製鋼のエネルギー源として、石炭の代替物としてますます期待されています。三菱重工の子会社であるプリメタル・テクノロジーズは、オーストリアの鉄鋼ベースのテクノロジー企業であるフェストアルピーネと提携し、水素を燃料とする鉄鋼生産プラントをオーストリアに建設しています。
1938年に設立されたフェストアルピーネは、オーストリアの冶金および鉄鋼ベースの技術グループで、自動車、消費財、航空宇宙、石油、ガス産業での実績があり、鉄道システム、工具鋼、特殊分野では世界的リーダーでもあります。 このグループはグローバルに運営されており、50か国を超える国々に49,000人の従業員がいます。 アジアでは、高性能金属を専門とする日本を含む50近くの子会社とオフィスがあります。
この10年で環境と気候の保護に約23億ユーロを投資し、CO2排出量の削減に役立つ代替製造プロセスの研究を開始しました。 この分野のプロジェクトには、鉄鋼生産における水素の使用と再生可能水素の工業生産が含まれます。
東京に本社を置く三菱重工株式会社(MHI)は、8万人の従業員を擁する世界有数の工業企業です。 130年以上前に創設された同社は、商用航空、輸送、発電所、ガスタービン、機械やインフラストラクチャから統合された防衛および宇宙システムまで、幅広い業界にソリューションを提供している、世界第3位の製鋼設備企業です。三菱重工は現在、水素分野での存在感を高めています。水素供給と設備建設・エンジニアリングの両面での活躍を目指し、ノルウェーの水素製造装置と水素製造業者の株式を取得しました。 同社は11,000人の従業員、100以上の事務所や工場、600以上の欧州サプライヤーとの関係により、欧州全体で包括的な存在感を維持しています。
欧州企業とのパートナーシップは色々ある中で、三菱重工は2015年にシーメンスと、金属生産のソリューションに特化した合弁会社、プリメタル・テクノロジーズを設立し、 2020年にはその完全な所有権が三菱重工とパートナーに譲渡されました。 プリメタル・テクノロジーズは現在、水素を燃料とする鉄鋼の生産を調査しています。
セメント、化学薬品、鉄鋼生産などの排出量の多いセクターの脱炭素化は、日EUが設定した2050年のカーボンニュートラル目標を達成するための鍵となります。 世界の化石燃料からの直接CO2排出量のうち、鉄鋼業界が7〜9%を占めています。 鉄鋼生産からの排出量削減の取り組みの一環として、さまざまな技術が開発されています。 水素はますます実行可能な選択肢として有望視されています。鉄鋼生産の重要なステップである鉄鉱石からの酸素の除去は、通常石炭などの化石燃料から生成される大量の熱を必要とするため、製鋼におけるCO2排出量の大部分を占めます。 三菱重工のプラメタル・テクノロジーズは、従来のプロセスよりも低い温度で動作し、水素を燃料にできる革新的なプロセスを開発しています。
この新しい水素燃料プロセスのパイロットプラントは、オーストリアのドナヴィッツにある鉄鋼テクノロジー企業、フェストアルピーネ社の敷地に建設されています。 プロセス全体のエネルギー効率を高めるために、熱回収システムもプロジェクトに含まれています。 同工場は2021年に操業を開始し、年間2.5万トンの鉄鋼生産能力が見込まれています。
このパイロットでは、水素はガス会社から供給され、必ずしもクリーンな供給源から生成されるとは限りません。 水素燃料製鋼の真の脱炭素化達成は、再生可能なCO2フリーの水素を廉価で大量に入手できるかどうかにもかかっています。 現在、業界で使用されている水素のほとんどはメタンから生成されており発生源でCO2を排出しています。 ゼロエミッション製鋼は、化石のないエネルギーを使用して水から電気分解することによって生成できるゼロエミッション水素を必要とします。 この点で最も進んだプロジェクトの1つはH2Futureで、これもオーストリアのフェストアルピーネの敷地内にあります。 EUの資金提供を受けたH2Futureは2017年に開始され、シーメンスが開発した技術を使用して再生可能電力から水素を生成します。
フェストアルピーネ、三菱重工、新日鐵などの日本企業に加えて、ドイツのSMSやティッセンクルップ、イタリアのダニエリなど、さまざまな技術を使用して水素燃料製鋼プロセスを追求するヨーロッパ企業が増えています。
写真: フェストアルピーネ AG, 出典: voestalpine.com | プリメタル・テクノロジーズ / primetals.com